2009年10月27日火曜日

歴史的な文章

 また、前の投稿から間が空いてしまった。大学で教員をやっている人が多いメンバーだと、どうも講義のある時期はスカスカになりぎみ。気を取り直して、長い目でやっていきましょう。
 
 さて、今回は「歴史的な文章」と題して、インターネットの歴史上、筆者が独断と偏見で重要と思われる文章をいくつか上げてみたいと思う。
 まず最初は、「Netizens: An Anthology」である。
 知る人ぞ知る、であるが、私が学生だったとき、コロンビア大学のサーバーにアクセスしてこのテキストを落としてプリントアウトし、ファイリングし、大事に本棚にしまっておいたものだ。あれから15年も経過してしまった。
 「ネチズン」とカタカナで書くと分かりにくいが「Netizen」と書けば「Net」と「Citizen」の造語であることは一目瞭然である。造語というか、もはや「ネチズン」という単語になっていると言っても良いであろう。いまや、ブログにSNS、GoogleにYouTube、そして携帯インターネットと、TCP/IP、つまりは、インターネット(the Internet)無しには私たちの生活は語れない。そうした市民を「インターネット市民」≒「Netizen」としたわけである。
 このアンソロジーを提唱したのは、コロンビア大学のマイケル・ハウベンという研究者であると言われている。なにせ、第一章の題目が美しい。「The Net and the Netizens: The Impact the Net has on People's Lives」である。
 今でも、コロンビア大学のサーバーに置かれたこのノートは、次の世代、つまり、デジタルネイティブの時代にも受け継がれていくことだろう。

 さて、もう一つは、「RFC 1468」である。正しくは、1468番目のRFCということになろう。RFCの詳細はここでは割愛するが、これは私たち日本人にとっては、歴史的な文章であることは間違えない。このRFCが書かれるまでは、電子メールは、英語でしか書いてはいけないことになっていた。しかし、日本でもインターネットが普及しはじめると、ローマ字での電子メールのやりとりが次第に増えてきて、WIDEプロジェクトの代表者、村井純氏(現・慶応義塾大学教授)が日本語で電子メールが書けるように、この1468番目のRFCを書いたわけだ。そんなことはないだろうが、村井先生がこのRFCを書かなければ、今私たちは、こうやって電子メールを書いていないかもしれない。(まぁ、それはないけど)。余談だが、先日、車で都内を走っていたら、「1468」というナンバープレートのフィアットを発見。思わず、追いかけて、乗っている人物が村井先生じゃないことを確認するも、心の中では、「弟子だな」などと、ひとり微笑していた次第である。とにかく、「RFC 1468」は、日本のインターネットにとって非常に重要なRFCであることは間違えない。
 その村井先生の率いるWIDEプロジェクトも20年が経過し、先だって、9/29に「WIDEプロジェクト2009年9月報告会」が行なわれ、30年目に向かって新たなスタートを切った。プロジェクト代表(CEO)は村井先生、そして、COOには、江崎浩氏が選出された。江崎氏も村井先生同様、日本のインターネットを牽引してきた先人の一人である。いずれにせよ、この10年もWIDEプロジェクトの活動に大きく期待したい。
 ところで、当社には会議室がいくつかあり、月並みであるが、部屋一つ一つに名前がついている。メインの会議室は2つあり、その内の一つは「WIDE」と名づけられている。そして、もう一つは「CERN」。なぜ「CERN」かは、また別の機会があれば、そこでお話したい。

代表主任研究員(T) 専門:情報産業論、メディア技術論