2009年5月12日火曜日

第一回「CDショップ大賞」決定!

 5月2本目は、時事ネタ。

 本日「CDショップ大賞(http://www.cdshop-kumiai.jp/)」が発表になり、渋谷のHMVでイベントと授賞式が執り行われた。いままでの、例えば、レコード大賞などとは異なり、投票権を持っている審査員は、一般のCDショップ「店員」の皆さんである。あくまでも、生活者目線。

 そういえば、これと似た賞を思い出す。

 そう、もう知っている方も多いと思うが

 「本屋大賞(http://www.hontai.or.jp/)」だ。

 一般の書店員さんたちが立上げ審査員を務めたこの賞。大賞や、入賞作品が、ミリオンセラーとなり、世に出てきた。私としては、当時すごいインパクトを受けたことを覚えている。NPO法人化もしており、書籍文化のボトムアップを、まさに、生活者目線で行なった賞といっても良いだろう。リリー・フランキーの『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』(扶桑社)や東野圭吾の『容疑者Xの献身』(文藝春秋)、小川葉子『博士の愛した数式』(新潮社)などは、本としてミリオンセラーになるばかりでなく、映画化もされているので、聞きなれた作品かもしれない。

 さて、今日の「CDショップ大賞」は、このCD版といってもいい。詳細は、ホームページをご覧いただきたいが、大賞に、「シフォン主義」相対性理論、準大賞に「THIS IS MUSIC」大橋トリオ、「GAME」Perfume、がそれぞれ選ばれている。

 私はかねてから色々なところで、半ば確信犯的に、既存のメディア産業を旧メディアと呼び、インターネットに代表されるメディアを新メディアと呼び、これを、二項対立モデルのように書いてきた。結果、いつも、新メディアが勝る、というのが、大方の文脈であった。

 例えば、楽天やライブドアのテレビ局の買収騒ぎにおいても、なぜか、この新旧両メディア産業は、すぐにけんか腰になる。というか、旧メディア産業が新メディア産業を受け入れないのである。特に、ライブドアがフジテレビ(系列)を買収にかかったとき、フジテレビのトップが、嫌悪感や怒りをあらわにしたが、私からすれば、「じゃ、なんで上場したのよ。買収されるのが『怖い』なら、上場しなきゃいいじゃないよ」と言いたくなって、いろいろな場で、そう言ってきた。

 ということで、前置きが長くなったが、どうも、この新旧両メディアの接触は刺激的なようである。あの買収騒動の際、ライブドア元社長の堀江氏は、ジャーナリストの江川紹子氏のインタビューで「(インターネットは)、新聞やテレビを殺していくんです」と、これまた刺激的な発言をしている。これも確信犯的な発言だとは思うが、それにしても、刺激的である。

 さて、ここで本題。結論から言えば、この新旧両メディア産業は対立する必要なんてないのである。ましてや、インターネット産業は既存のメディア産業を「殺そう」なんて、これっぽっちも思っていない。以前、このブログで、IPTV(もっと言えば、インターネットテレビ)についても触れたが、その際も、インターネット的なものと、テレビ的なものの「対立」が、どうしても生じてしまうことに触れた。この議論には、一番大切にされるべき、生活者が不在で、既得権益者がその既得権を守ることに必死になっているだけのように見える。生活者にとって、あるいはテレビの場合は、視聴者にとって、何が一番大切なのか、を考えることが大切であろう。生活者にとって、メディア接触の「デバイス」は何であろうと関係ない。小説を本で読もうが、携帯で読もうが、どっちだっていいわけである。それは、産業側がおしつけるものではなく、提案するものである。互いが互いを補完しあっていけば良いのである。現に、在京キー局が株主に名を連ねるインターネットベンチャーは数多く存在する。そうやっていけばいいと思う。

 そして、さらに大切なことは、インターネット的な人たちは、「旧態依然とした体質」が大嫌いである。無論、インターネットの歴史をひっくり返せば、元は反骨精神バリバリのハッカー文化にそのルーツを見出すことができるわけで、ビューロクラティックなことは大嫌いなのである。

 ここまでの話を踏まえて、話を元に戻すが、昔からあった、「レコ大(レコード大賞)」や、文学の世界でいう「芥川賞」や「直木賞」は、審査をする人たちがプロだった。そして、密室での審査だった。インターネット的な人たちは、こういうのが大嫌いなのである。

 「もっと生活者目線でやらなきゃだめだ!」

 インターネット的な人たち、言い換えれば、新しいジェネレーションの人たちは、きっとそう思ったのだろう。そんな中で、「本屋大賞」や「CDショップ大賞」といった企画が出てきて、結果、出版、CD、それぞれ産業としては右肩下がりになってきているが、それぞれのメディア業界のボトムアップをすることに成功した(少なくとも前者は)のには、非常に大きな意味があるし、「旧態依然体質」への、おおきなアンチテーゼになったのではないだろうか。 梅田望夫氏的に言えば「WEB2.0」的なるものである。


代表主任研究員(T) 専門:情報産業論、メディア技術論

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